【すぐ実用化されるって聞いたけど…】一世を風靡した「自動運転」は今どうなってる?
掲載 更新 carview! 文:山本 晋也 28
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2022年後半対話形式で様々な情報を生成できるにAI(人工知能)のチャットサービス「ChatGPT」がリリースされて以来、世界がAIブームに沸いています。
AIに欠かせないGPUを生み出したNVIDIA(エヌビディア)社の株価の年初来の上昇は、AIブームの経済的な影響が大きいことを象徴していますが、未来をAIが変えることになるというのは、おそらく世界中のコンセンサスでしょう。
そのNVIDIAは、自動車業界ではすでに次世代に欠かせない企業として知られていました。とくにメルセデスは、NVIDIAとの関係を強めていることで知られています。AIやメタバースといった領域において、両社のパートナーシップは深まっています。
自動車業界にとってAIは“自動運転”を実現するための重要なファクターです。そのキーデバイスとしてNVIDIAのGPU(※画像処理に特化したゲーム用プロセッサで、AIや暗号通貨の演算にも使われる)が注目を集めているわけです。
<NVIDIAが販売を予定する自動運転向け量産車対応のコンピュータプラットフォームやセンサー類を統合するドライブハイペリオン>
では、すぐさまAIによって完全自動運転が実現するかといえば大いに疑問です。
「ChatGPT」はもとより、マイクロソフト「Bing(ビーイング)」やグーグル「Bard(バード)」など、対話形式での検索ができるサービスは広がっているものの、しばしば間違った情報が表示されるというのはユーザーの常識です。
フィードバックによって急速に進化しているとしても、こうした間違いが起きる限り、進化中のAIに自動運転を任せることの難しさは容易に想像できるのではないでしょうか。
マイクロソフトのサイトから引用すれば、『Bing はテキストと画像を理解して生成できる AI で機能しているため、予想外の応答をしたり間違えたりすることがあります』とあります。
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そもそも運転というのは一歩間違えれば命を奪ってしまう行為。自動運転でAIが予想外に間違えるのはNGです。
リアルワールドのテスト走行でも、仮想空間でも予想外のミスが起きないレベルまでAIを鍛え上げる必要があります。精度の高い仮想空間でのテストが実現すれば、AIの自己学習は凄まじいスピードで進むでしょうし、いつかはドライバー不要な完全自動運転は実現するはずです。
<ホンダの目指す自動運転技術導入のステップ>
しかし、数年内にAIによる自動運転車が量産され、公道を走り出すことは考えづらいといえるのではないでしょうか。
ただし、完全自動運転を目指した開発が、その前段階としての従来型の先進運転支援システム(衝突被害軽減ブレーキやACC、レーンキープ機能など)を大きく進化させることは期待できます。
自動運転では各種センサーからの情報収集も重要です。自動運転を目指して開発されたセンサー類がこうした従来型の先進運転支援システムに採用されることで、先進運転支援システムはどんどん進化していくはずです。
<レベル3自動運転に近い高度なレベル2を実現するプロパイロット2.0を搭載するセレナ ルキシオン>
思えば、初期の衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)は、車両しか認識できないものでした。それが最新の機器では歩行者や自転車を検知できるようになり、さらに夜でも歩行者を見つけられるようになってきています。いまでは交差点における右直事故を予想してAEBSを作動させる機能も製品化されました。
ある日突然、完全自動運転が実現するのではなく、「先進運転支援システムが進化していく中で、クルマに運転を任せることへの信頼が熟成されていき、最終的に誰もが安心して自動運転を利用できるようになる」というストーリーが予想されます。その意味では、自動運転の実現を急ぎすぎて、市場の信頼を失うという事態は避けるべきでしょう。
一方で日本には完全自動運転へ向けて、官民一体となって開発を進めるインセンティブもあります。
トラック・バス・タクシー業界では職業ドライバーの高齢化で人材不足は待ったなしです。ネット通販ビジネスの拡大で宅配ドライバーのニーズは増える一方ですが、こうした業界でも人材不足が顕著になっています。
<ホンダとGMが2026年に国内で実証実験を開始する自動運転タクシー>
完全自動運転というと、誰もが自動運転のマイカーやショーファーカーに乗って移動する時代が来るようなイメージを抱いてしまいますが、現実的にはまず、物流を自動運転によって支える未来を目指すべきではないでしょうか。
写真:トヨタ、ホンダ、日産、SUBARU
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